旅立ち
遠く、遙か遠くより押し寄せるうねり。
蒼色の波が寄せて返し、寄せて返し。
いつ果てるともなく。
時の狭間を越えて、
遠く海鳴りのように響く雷鳴。
黒き雲、疾風のごとく頭上を覆う。
波泡立ち、波頭鋭い槍となり飛び交い、
木々はうなり鳥は逃げまどい、
地上の草はひれ伏し、
土や小石は礫となり、
ありとあらゆる物が姿を変える。
逆巻き泡立つ波間は蒼く、よりいっそう蒼く。
全ての現象を波間に吸い込もうとする。
頭上を覆う暗闇はあらゆる物を宇宙の深奥に
吸い出そうとする。
暗黒の中に翻弄され
手に触れる物全てに掴まり
大地に立つ。
氷の疾風に凍え、礫に身を削られ、
生き物は己が存在を主張する。
暗闇にうごめく虫も、空を飛ぶ鳥も
地球上のあらゆる生命が
この惑星に命運を託す。
海は広く、空は広く。
海の果てと空のかなたが交わって
海は宇宙へ広がる。
羊水という海に育った人類が
やがて海の広がりと共に
宇宙へ旅立つ。
星々のきらめく宇宙へ。
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