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傭兵

遠く異境の地で傭兵としての訓練を受けているあなたに、
この春風が届くでしょうか。
みずみずしい若葉の茂る木立を吹き抜け、
清々しさと、優しさを頬にそっと寄せるこの風を。
雪解けの冷たい水が、山奥の小さなせせらぎから流れ出て、
イワナやカジカと戯れているのを知っていますか。
山の残雪も小さくなり、
やがて辺り一面お花畑になるでしょう。
里ではツバメが、川風に揺れる柳の枝をかい潜り、
くるりくるりと飛翔しています。
あなたがよく好んで走っていた公園は、桜も散り山ツツジが
その小さな花を色鮮やかに咲せています。
この自然の中で真っ直ぐに育ったあなた。
誰よりも悪を憎んだあなた。
そんなあなたは武器を持って悪と戦うと言い国を後にした。
知っていますか、そんなあなたを育んだこの自然も、
戦いによって破壊されるのを。
今も昔も、戦いに聖地は有りません。
死んでいくのは兵隊ばかりでは有りません。
生きる物全てを含めた自然が死んでいくのです。
この地球が死んでいくのです。
我々の子孫は、やがてこの地球より宇宙に向かって飛び立っていくでしょう。
そして、宇宙の隅々まで人類が進出するようになるでしょう。
やはり、宇宙空間で武器を持って戦っているのでしょうか。
民族、宗教、国家という障壁を持って
宇宙を支配するのでしょうか。
心優しいあなた、そんなあなたもやはり武器を持つという。
武器を持つ限り戦いは止まらない。
心美しいあなたに、この春風を届けたい。
この風の便りがあなたの元に届く頃、もう初夏でしょうか。
純真なるあなた。
目に涙を浮かべて、銃の引き金を引いているのでしょうか。
心の苦痛に顔を歪めて撃っているのでしょうか。
汗と、涙と、泥と、あなたでない顔がある。
もうこの風はあなたに届かない。
涼やかな緑も、美しい流れの川も無いから。
もうこの風は届かない。
そして今。
遠い昔、アフリカで産まれた人類が、もっと遠くへ旅立とうとしている。

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